保護猫初心者ガイド:1匹を保護するために必要なこと

街で見かける野良猫や迷子猫。そんな猫を助けるために、多くの人が「保護猫活動」に取り組んでいます。

この記事では、保護猫活動にあまりなじみのない方に向けて、西宮保護猫かぎしっぽが具体的にどのような流れで保護〜譲渡するのか、そしてどれだけの手間やコストがかかるのかを紹介します。これを知ることで、保護活動がいかに多岐にわたるものか知ってみませんか?



ステップ1:発見・捕獲

猫を見かけたからといって、すぐに保護するわけではありません。まず、その猫が本当に助けが必要なのかを見極めます。もし迷子猫や飼い猫でないことが確認できた場合、捕獲を考えますが、これは慎重に行います。

捕獲依頼があった猫は基本的にはTNRを行います。ただし、以下のような子は捕獲依頼があってもTNRではなく保護という形をとることが多いです。

  • 子猫:避妊去勢手術ができないくらい小さく、お外で一人で生きていくことが難しそうな猫
  • 怪我している猫・重症の病気:今後お外で生きていくことが難しそうな猫
  • 人に良くなついている猫:家猫になった方が幸せになれそうな猫、虐待の危険性など

捕獲についてはTNRについての記事に詳しく書いているので、よければそちらも読んでみてください。

捕獲が成功したら、次は動物病院へ連れて行き初期治療を行います。


ステップ2:医療処置と費用

保護された猫は、まず健康チェックを受けます。

特に野良猫の場合、病気にかかっている可能性があるため、ウイルスチェックや予防接種が欠かせません。また、手術に耐えうる一定以上の体重がある猫は、すぐに避妊去勢手術を行います。すぐにできない場合は、成長後や回復後に改めて手術を行います。

初期医療にかかる費用(記載は税抜価格)

  • 避妊去勢手術
    ♂猫:6,000円~7,000円
    ♀猫:12,000円前後
    ※西宮市では所有者のいない猫を対象とした避妊去勢手術に助成金があり、条件を満たしている場合にはメスは12000円、オスは6000円と規定されています。(保護し里親を探す保護猫や多頭飼育崩壊の手術などは対象外です)
  • ワクチン接種(2回):1回3,000円~4,000円
  • ウイルスチェック:3,000円~4,000円
  • 駆虫:2,800円~4,000円
    駆虫薬は病院で処方してもらうものだけでなく、市販で買えるのも複数あります。かぎしっぽでは保護時に市販の駆虫薬を使うこともあり、状態に応じて適切なお薬を使って駆虫しています。
  • その他の治療や検査費用:症状や健康状態によって異なります。

初期医療は1度の通院では完了しません。ウイルスチェックは、最低2週間以上の隔離期間後でないとできません。これは捕獲直後に潜伏している病気があると検査で検知できないため、パルボウイルスを想定して検知可能になる2週間隔離するのです。

隔離とは他の猫と接触しないように、物理的に空間・食器・トイレなどを分ける必要があります。こういった準備は保護ボランティアの方が日々行っています。

これらの費用に加えて、猫を動物病院に連れて行くための交通費もかかります。保護猫活動は思った以上に出費がかさむものです。


ステップ3:保護期間中のお世話

保護された猫は、すぐに新しい家に行けるわけではありません。

まずは一時的に保護される場所で、健康が確認されるまでの隔離期間を過ごします。他の猫や人との接触を避け、慎重に見守る必要があります。無事ウイルスチェックが完了した後も、人慣れしていない猫の場合は訓練し、そうでなくとも人と暮らすことに慣れるようボランティアメンバーが昼夜問わず尽力しています。

必要な備品

猫を世話するために、以下のような物資を準備します。消耗品や体調によっては通院が必要となりますが、そういった費用を団体への寄付とボランティアメンバーそれぞれが補って保護しています。

  • 駆虫薬:保護してすぐ駆虫、その後期間を空けてシャンプー
  • キャリーケース:移動のために必要
  • ケージ、目隠し布:猫を安心して過ごさせるための空間
  • トイレ、猫砂、ペットシーツなど:清潔な環境を維持するために不可欠
  • フード・水入れ:日常的な世話のための必需品
  • 除菌スプレーやタオル
    子猫やお外の生活が長い子はトイレに慣れず毎日トイレをひっくり返すことがあります。また、子猫はお腹を壊しやすいので清潔に保つ必要があります。

これまでにご寄付くださった皆様、いつもありがとうございます!
おかげ様でこのようなお世話を十分に行うことができています!!

赤ちゃん猫の場合は昼夜問わず2〜3時間おきにミルクをあげたり、トイレのお世話をする必要があり、さらに手間がかかります。保護猫活動は、単なる「保護」だけではなく、細やかな日常のお世話が続くことを理解する必要があります。

私たちボランティアメンバーは無償で猫たちのお世話をしています。目の前の猫1匹1匹にそれぞれに元気に・幸せになってほしいという愛情があるからこそ、責任をもって献身的にお世話をできるのです。


ステップ4:譲渡の準備と流れ

猫の健康状態が安定し、人間とのコミュニケーションに慣れてきたら、次に行うのは新しい里親探しです。
譲渡会などに参加し、里親候補者様との出会いの機会を作ります。

譲渡会

西宮保護猫かぎしっぽでは、毎月第1日曜日に西宮浜産業交流会館(NICC)にて主催譲渡会を行っています。多くの猫はこの譲渡会で新しい家族と出会っておりますが、中には近隣の別団体が主催する譲渡会に参加させて頂けることもあります。

譲渡会を行うには譲渡会場の準備や告知活動、猫を展示するためのケージや目隠しなどの備品も必要です。

猫たちと新しい家族のよい出会いの場となるように、常にスタッフ同士で意見を出し合い手を尽くしています。

トライアル期間と正式譲渡

里親候補者様が見つかった場合、いきなり完全に譲渡するのではなく、まず「トライアル期間※」を設けます。この期間中、猫と里親候補者、先住猫などが生活に慣れるかを確認します
※基本的に2週間

相性が合わない場合は、再び猫を引き取ることもあります。トライアルがうまくいけば、正式に譲渡契約が結ばれ、猫は新しい家族の一員となります。

もし譲渡先が決まらない猫がいた場合、終生飼育して管理することも団体として必要な活動です。


結論:保護猫活動は愛と労力を要するもの

保護猫活動は、猫を見つけて「かわいそうだから保護する」という簡単なものではありません。捕獲から医療処置、そして新しい家族を見つけるまでの長いプロセスが伴い、それには費用も労力もかかります。

この活動に携わる人々は、猫の命を救うという強い意志と愛情を持って取り組んでいます。保護猫活動がどのようなものかを知ることで、あなたもその尊さを感じていただければ幸いです。

そして、よろしければ実際に譲渡会場に足を運んだり、地域猫に目を向けていただいたり、できる範囲で保護猫活動をサポートいただけますと幸いです。